アメリカとタリバン間の和平合意

2月29日に、アメリカ政府とタリバンの間で、米軍完全撤退含む初の和平合意に署名したという。しかし、タリバンはアフガン政府軍とは戦うと言っており、アフガニスタンが本当に平和になるとは言えそうにない。

外務省に副大臣として戻った時、一番やろうとしたのが、米タリバン間の和平の仲介だった。当時、外務本省にはアフガニスタンについてのただ一人とも言える専門家がいたし、かれとは在パキスタンの大使館で一緒に勤務した仲だったので、彼のアフガニスタン人脈(ムジャヒディン、タリバン等)を活用して、アメリカとタリバンとの間の合意をとりもち、アメリカがアフガニスタンから撤退するのを手伝うことができるとの確信があった。しかし、外務省内をうまくまとめきれず、それが実現できなかったことは、今から思っても残念だ。正直、自分が外務大臣だったらできていたのになあとの想いは有る。

そもそもアフガニスタンに手を出した国は皆ひどい目にあっている。ソ連は10年で崩壊した。アメリカも、アフガン戦争のやり方を間違った。簡単に勝てると思ったのが間違いだったのみならず、イラク戦争まで始めてしまい、それがその後のアメリカの調子を狂わせ、内向きになったのみならず、世界における地位の低下を招いてしまった。

あの時だったら、日本がアメリカとタリバンとの仲介をすることが可能だったろうが、今となっては困難だ。アメリカをアフガニスタンから引かせることは、アメリカの同盟国として日本ができる非常に大きな貢献になると思ったし、今から振り返って、それは正しかったと思う。日本の外務大臣にはそういう戦略的発想が必要と思う。

今になってアメリカとタリバンの間で和平合意と聞いて、虚しく感じてしまう。

しかも、今回の合意はタリバン側に、アフガン政府軍との戦闘は別だと言わせる余地を残している点で極めて不十分であり、アメリカ国内の大統領選挙をにらんだ拙速の感を免れない。(了)